ヨウ素の過剰摂取と甲状腺

ヨウ素の過剰摂取と甲状腺

ヨウ素の過剰摂取と甲状腺
ヨウ素の過剰摂取は甲状腺疾患を誘発する恐れがあります。

このヨウ素の過剰摂取は、 甲状腺機能亢進症だけでなく、 甲状腺ホルモン阻害物質の発生によって、 甲状腺機能低下症のリスクにつながることが指摘されています。

ここでは、ヨウ素の過剰摂取と甲状腺疾患、 および、ヨウ素の摂取量について、 紹介しています。

ヨウ素過剰と甲状腺の関係

ヨウ素は健康な甲状腺機能と甲状腺ホルモンを合成するために必須の栄養素です。

ヨウ素不足

ヨウ素が不足すると甲状腺ホルモンの合成が損なわれ、 甲状腺機能低下症、甲状腺の感受性の増加、また、 胎児においては死産や流産、先天性異常の原因となります。

21世紀の現在でも世界で20億人程度、47の国々がヨウ素の不足によるリスクがあると考えられています。(※1)

参考:
※1:WHO(世界保健機構)「2007年のヨウ素欠乏:1993年以来のグローバルな進展」

ヨウ素過剰

しかし、ヨウ素を過剰に摂取しすぎると、 「無症候性甲状腺機能低下症」につながる恐れがあることが指摘されています。

特に日本は海に囲まれた国であることから、 魚介類を通じてヨウ素を過剰に摂取する機会が多くなっています。

ヨウ素過剰がなぜ甲状腺機能低下につながるのか

古く1948年、カリフォルニア バークレー大学で行われた研究によると、 ヨウ素を多量に投与されたマウスは、 24時間、甲状腺ホルモンの合成量が低下した、と発表されています。

このヨウ素過剰による甲状腺ホルモンの合成低下は、 「急性ウォルフチャイコフ効果」と呼ばれ、 そのメカニズムは未だ完全には解明されていないものの、 甲状腺ホルモン阻害物質の発生によるものと推測されています。

また、ヨウ素過剰による甲状腺ホルモン合成の低下は、 多くの場合、一過性であると考えられているものの、 特定の危険因子(※1)を有する人においては、 甲状腺機能低下症を発症するリスクが高くなることが指摘されています。

危険因子として指摘されている人
  • 現在あるいは過去において、甲状腺疾患を有するもの
  • 高齢者
  • 胎児
  • 新生児
  • その他(まだ分かっていない事柄が多い)

ヨウ素が豊富な地域での甲状腺機能低下症の有症率

北海道中央病院が、 海藻(昆布)を産出するヨウ素が豊富な日本の5沿岸地域、1,061人を対象に調査したところ(※1)、 これら地域では、 甲状腺機能亢進症の有症率は他の地域と同程度であったものの、 尿中ヨウ素の排出率が高い(ヨウ素の摂取量が多いことを意味している)ほど、 甲状腺機能低下症の有症率が高くなっていました。

これら結果を受け、以下の様な内容について、警告しています。

ヨウ素過剰摂取と甲状腺機能低下症
  • ヨウ素が十分な地域において、甲状腺機能低下症の有症率は、ヨウ素の摂取量と関係している可能性がある
  • ヨウ素を過剰に摂取していた被験者では、甲状腺機能低下症はより一般的であった
  • ヨウ素の過剰摂取は、慢性甲状腺炎に加えて、甲状腺機能低下症の病因として考慮すべきである


また、この調査・研究結果を踏まえ、 厚生労働省も 「3.3 mg/日を超える連続的なヨウ素摂取に、間欠的な(たまに)10mg/日を超える高濃度のヨウ素摂取が加わった場合に、 甲状腺機能の低下が起こる可能性を示すものといえる。」と発表し、 この研究をもとに、日本でのヨウ素の耐容上限量が決められています。

参考:
※1:北海道中央病院「日本の沿岸地域での食事のヨウ素摂取量と無症候性甲状腺機能低下症の有病率との間の関連」

ヨウ素の一日摂取量

厚生労働省によると、 成人男女(18以上)のヨウ素推奨量は130μg/日、 上限量は3,000μg/日とされています。

また、日本人の平均ヨウ素摂取量は、 推奨量の10倍以上の平均1,400μg/日(1.4mg/日)程度と推測され(※1)、 多くの人がヨウ素の摂取過多の傾向にあると言えます。

ヨウ素の一日摂取量
推奨量 130μg
上限量 3,000μg
妊婦付加量 +110μg
(ただし、上限は2,000μg)
授乳婦付加量 +140μg


参考:
※1:厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2015年版)」

ヨウ素を多く含む食品

ヨウ素を多く含む食品
こんぶ 131,000μg
わかめ 7,790μg
あまのり 6,100μg
いわし 268μg
さば 248μg
かつお 198μg


参考:
五訂 日本食品成分表 食品成分研究調査会編

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