慢性疲労症候群の症状と治療
「疲れが取れない」、「疲労かな」、と考えていると実は非常に重い疾患だったということがあります。 慢性疲労症候群もその一つです。慢性疲労症候群は慢性疲労と名称は似ていますが、慢性疲労とは全く異なる固有の疾患名称です。
その疲労の重さと慢性的な疲労症状が名称の由来となっています。
ここでは、「本当に単なる疲労なのか」、「慢性疲労症候群かも」と考えている方に、 慢性疲労症候群の定義、症状、原因、病院での検査などについて紹介しています。
慢性疲労症候群は慢性疲労とは全く異なる病気
慢性疲労症候群は慢性疲労と名称は似ていますが、全く異なる非常に重い病気です。慢性疲労症候群は、圧倒的な疲労により実生活を送ることが非常に困難になります。
症状が重い場合、 それは朝ベッドから身体を起こすことから始まり、階段の昇り降り、買い物に行くことさえ常に疲労を伴い、 生活の大部分において非常に苦労します。
また、慢性疲労症候群は睡眠などで身体を休めたり、栄養を摂取して回復しようと試みても改善されることがありません。 慢性疲労症候群にかかると身体を動かすことが非常に困難なことから、第三者に怠けていると誤解され、苦しむケースも見受けられます。
慢性疲労症候群の患者数は日本人の0.3%
慢性疲労症候群は非常に珍しい疾患であるかのように思われるかもしれませんが、日本でも0.3%の人が慢性疲労症候群にかかっており、人数ではおよそ38万人にも及びます(※)。
これは、欧米や世界の患者数、0.2%~0.7%と比較しても大きな差異はありません。
つまり、1,000人に3人の割合で発症するそれほど珍しい病気ではないということです。
※参考:厚生労働科学研究
慢性疲労症候群の症状
慢性疲労症候群かも、あるいは、疲れが少し異常で日常生活が困難だ、と感じたならば、まずは慢性疲労症候群の規準に合致するかどうかご確認下さい。
この規準は国や団体により規準の決め方や表現が若干異なるため、詳しくは各団体のサイトをご参照ください。
厚生労働省 慢性疲労症候群(CFS)臨床診断基準
以下のサイトの「表1. 慢性疲労症候群(CFS)臨床診断基準」に詳細な記載があります。ご参考:厚生労働省 慢性疲労症候群(CFS)臨床診断基準
日本疲労学会診断指針
日本疲労学会とは慢性疲労症候群研究会、疲労研究会、文部科学省疲労研究班などが母体となり作られた学会です。 内容は厚生労働省 慢性疲労症候群(CFS)臨床診断基準と似ています。ご参考:日本疲労学会診断指針
国際症例規準 1994
ここでは世界で最も著名な国際症例規準を元に慢性疲労症候群の規準を紹介します。- 6ヶ月以上、連続で慢性疲労の症状があり、疲労によって作業の継続が困難になる
- 疲労が日常的な活動や仕事を妨害する
- 以下の症状のうち、4つ以上に当てはまる
- 24時間以上継続する倦怠感
- 睡眠でリフレッシュしない
- 短期記憶や集中力の著しい障害
- 原因不明の筋肉痛
- 腫れや赤みなしの関節の痛み
- 重症の頭痛
- 首や脇の下のリンパ節の腫れ
- 喉の痛み
重症度は3段階
慢性疲労症候群の全ての人が、同じ重症度であるわけではありません。他の病気同様、人によって重症度は異なり、「軽度」「中度」「重度」の3段階に分けることができます。
軽度 | 活動エネルギーが以前と比較して50%程度まで下がる。 仕事や自分の世話はできるものの、休みの日は終日休息を必要とする。 |
中度 | 症状が原因となり、主に家に閉じこもる(出られない)。 あるいは、活動は午前で終了してしまい、午後には睡眠を必要とする。 |
重度 | 顔を洗ってご飯を食べること程度はできるものの、
それ以上は難しい。ひどい場合はベッドから起きることさえ困難。 |
原因
残念ながら、慢性疲労症候群の明確な原因は未だ発見されていません。様々な研究を通じて、いくつかのことが分かってきているものの、それを特定するまでには至っていないようです。
以下、慢性疲労症候群の原因と推測されているものの一例です。
- 感染
- ホルモン低下
- 免疫機能障害、アレルギー
- ストレス
- 異常な低血圧
- 栄養不足
また、慢性疲労症候群患者の多くがコルチゾールなど、特定のホルモン分泌が低下していることから、 それが原因の一つと考えられていましたが、検証の結果、低下はしているものの正常範囲内だったと結論付けられています。
その他、TGF-βやインターフェロンなどの免疫物質の異常から免疫機能低下、 ストレス、脳内の局所血流量の低下などがわかってきており、様々な観点から原因が探られています。
発症年齢は問わないものの、40~50代での発症例が多く、また、男性よりも女性のほうが多いようです。
診断
慢性疲労症候群の認知度は徐々に高まりつつありますが、 小さな病院では稀に誤診もあります。症状だけを見ると慢性疲労やうつ病、精神疾患、線維筋痛症、甲状腺機能低下症など様々な病気の症状と類似することから、 総合病院や専門医にしっかりと診てもらうことが大事です。
誤診が多い
認知度が低いため、医師の誤診が多いことに加え、患者本人の勘違いも多くなっています。重度の疲労に悩む人がその症状から、本人が「慢性疲労症候群では」と思い込み、診察を受けるケースが多いようです。
しかし、慢性疲労の症状が出る疾患は慢性疲労症候群以外にも多く、 うつ病、線維筋痛症、睡眠障害、貧血、甲状腺機能低下症など実に多くの疾患が当てはまります。
そのため、できれば最初は総合病院など大きな病院での診察してもらうか、セカンドオピニオンを求め、正しい病名を知ることが重要です。
疲労症状を伴う他の病気については、疲労を伴う病気一覧をご参照下さい。
合併症が多い
慢性疲労症候群患者の半数はうつ病を併発します。その他にも線維筋痛症や睡眠障害、投薬による副作用などの合併症を患うことが多くあります。
治療法
慢性疲労症候群の治療は各症状に合わせて、それらを緩和することに焦点が置かれます。
「睡眠」、「認知力低下」、「うつ病・不安」など各症状に合わせて様々な治療法が存在します。
各治療を受ける前に、必ず掛かり付けの医師にご相談下さい。
- 認知行動療法(感情や行動の負のサイクルを断ち切る)
- 段階的運動療法(ウォーキングなどの軽い有酸素運動)
- ペーシング(活動と休養のパターン管理)
- 薬理療法
- 非薬理療法
- 漢方処方
- その他ビタミンなど(マグネシウム、ビタミンC、カルニチン、ダークチョコレートなど)
- 不眠症のための睡眠薬
- 代替医療(ヨガ、鍼、マッサージなど)
2011年、イギリスで641人の慢性疲労症候群患者が参加した実験では、 4つのグループに別れ、それぞれ治療を行ったところ、 認知行動療法、または、段階的運動療法を施した群では、100名中41名が疲労が改善しました。
その他、ページング療法では100名中31名、他の治療法では100名中25名が改善し、 認知行動療法と段階的運動療法が慢性疲労症候群の症状に最も効果的であると結論づけています。
また、認知行動療法と段階的運動療法では、 およそ30%が完全に疲労が回復し、正常な範囲になった、と発表しています。
認知行動療法
医師と患者の意思・症状疎通により、日々の活動、ストレス、症状を管理し、改善していく方法です。また、問題をより小さくする分解することで、感情や行動の負のサイクルを壊し、 やりがいや改善へと結びつけていきます。
段階的運動療法
ストレッチ、ウォーキング、水泳など、有酸素運動を症状と目標に合わせて、 徐々に負荷(時間、強度)を上げていく運動プログラムです。段階的運動療法の詳細については、 慢性疲労症候群の回復方法【段階的運動療法】をご参照下さい。
その他
その他、自身でできる方法として、以下の内容が役に立つと考えられています。- ストレスを避ける
- リラックスする
- アルコール、タバコをやめる
- 糖分を避ける
- 太陽を浴びる
- 過度の昼寝を避ける
- 活動計画を立てる
- バランスのとれた食事を心がける
- 睡眠管理(毎日同じ時間に起きる、寝室に閉じこもらないなど)
睡眠障害、痛みの軽減、認知力低下(脳疲労)に対する問題、精神疲労など、 患者と医師の間で十分な話し合いの元、治療計画が立てられます。
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