成長ホルモンの増やし方
成長ホルモンが不足すると、人は疲労を感じやすくなります。年齢に関わらず、成長ホルモンの分泌量が減っている人は、 30代であっても、疲労感ややる気の欠如など様々な症状が出るようになります。
反面、60代、70代でも成長ホルモンの分泌量が30代と同量程度ある人は、 疲れを知らず、若々しい肉体を維持されています。
ここでは疲労の原因&回復剤となる成長ホルモンについて、 成長ホルモンとは、役割・作用、年齢ごとの分泌量、 成長ホルモンを増やす方法などについて、紹介しています。
また、成長ホルモン同様、30代後半以降不足しがちなホルモンであるテストステロン(男性ホルモン)の不足による病気と増やし方については、LOH症候群(男性更年期障害)が疲労の原因、または テストステロンを増やす24の方法をご参照下さい。
成長ホルモンとは
成長ホルモンとは、思春期には主に身長を伸ばす役割が注目されますが、 一生に渡って分泌される重要なホルモンであり、様々な役割を発揮してくれます。また、成長ホルモンだけでなく、成長ホルモンに刺激され分泌されるIGF-1(インスリン様成長因子)は、 疲労だけでなく、美容分野において非常に注目されています。
成長ホルモン(IGF-1含む)の役割と低下による症状
成長ホルモンの役割
|
成長ホルモンが不足すると…
|
やる気の増加
これは精神的な気力の増加と肉体的な体力の増加の2側面があり、 結果として様々な物事に対して、やる気と持続力が増加します。
絶食や断食は成長ホルモンの分泌を促すことがよく知られていますが、 断食ハイと呼ばれる現象は、成長ホルモンの分泌によってやる気が増加し、 疲労感が解消されることによるものです。
コラーゲン生成
デンマーク コペンハーゲン大学で行われた研究によると、インスリン様成長因子(IGF-1:成長ホルモンによって分泌される)は人体において、 コラーゲンの合成を強化するとしています。これは、コラーゲン含有量およびコラーゲン繊維の直径の増大という2つの方法において強化されるとしています。
アンチエイジングに成長ホルモンが取り上げられるのは、この作用による効果が大きいと考えられます。
脂肪を分解
中年太りやメタボ体型の人など、内蔵脂肪を多く抱える人に成長ホルモンを補充すると、脂肪が減ることが様々な研究で明らかにされています。反対に、脳の病気などが原因で成長ホルモンの分泌が完全に阻害されたり、 加齢などにより成長ホルモンの分泌量が人より少ないと、中性脂肪が増え、体脂肪率が上がります。
30~40歳になり、急に太りだしたり、メタボ体型になった人は成長ホルモンの減少が原因かもしれません。
筋肉量の維持(増加)
成長ホルモンそのものは筋肉量を増加させるかどうかは不明です。成長ホルモンに筋肉量を増加させる効果はないとする研究、効果があるとする研究が互いに複数存在します。
1992年にアメリカの生理学ジャーナルで発表された研究と内容によると、 成長ホルモンの投与+筋力トレーニングをしたグループと、プラセボ+筋力トレーニングをしたグループを 12週間に渡って比較したところ、 成長ホルモンを投与したグループはタンパク質量の増加と全身のタンパク質バランスの増加は認められたものの、 筋力そのものの量に変化はなかったとされています。
また、2007年スタンフォード大学で行われた研究では、 高齢者に対して成長ホルモンの投与によって、筋肉量が2kg増加した、と発表しています。
成長ホルモンによる筋肉増量効果は不明なものの、 60歳以上の患者に成長ホルモンを投与した実験では、 何事にもやる気が増加した結果、様々な生活習慣が改善され、精力的にトレーニングを行うようになり、 間接的に筋肉量の増加へつながっているという結果が出ており、 成長ホルモンは筋肉量を増加させる効果は非常に高いと言えそうです。
成長ホルモンを増やす方法
成長ホルモンを増やす方法は、自然に増やす方法と人工的に増やす方法があります。成長ホルモンを増やす方法
|
|
睡眠
成長ホルモンが分泌されるのは睡眠中です。また、成長ホルモンは寝る時間や概日リズムに影響を受けることはなく、睡眠時には必ず分泌されます。
※参考(外部サイト様):成長ホルモンと睡眠
ただし、睡眠の質が悪い場合や睡眠時間が短い場合、十分な成長ホルモンが分泌されなくなります。
また、睡眠時間の変化は疲労そのものの原因となるため、なるべく規則正しい時間に寝るほうが良いとされています。
睡眠不足や睡眠の質の悪化による疲労については、不眠症解消方法一覧をご参照下さい。
低血糖・空腹
理由は空腹による低血糖によって成長ホルモンが分泌され、 成長ホルモンによるアンチエイジング効果が注目されているからです。
空腹になると脳が低血糖を解消しようと、 肝臓でのグルコース生産を開始するため、 成長ホルモンを大量に分泌します。
そのため、空腹時には成長ホルモンが通常時よりも多く分泌されるようになります。
無酸素運動・加圧トレーニング
成長ホルモンの分泌のトリガーとなる一つの物質は乳酸です。有酸素運動は乳酸をあまり発生させないのですが、 筋力トレーニングや加圧トレーニングなど、いわゆる無酸素運動と呼ばれる運動は、成長ホルモンの分泌に必要な乳酸を多く発生させます。
(乳酸が疲労物質ではなく、一時エネルギーであることは、乳酸は疲労物質?をご参照下さい。)
そして、同じ無酸素運動でもより多くの乳酸を発生させるのは筋肉によって血管を押しつぶす高負荷のトレーニングなのですが、女性には負荷が高く実現が難しくなっています。
加圧トレーニングやスロートレーニングは 少ない負荷でも簡単に血流を阻害する効果があり、 低い負荷でも高負荷のトレーニング以上に乳酸を発生させ、 その結果、成長ホルモンが多く分泌されます。
加圧トレーニングのジムによっては、成長ホルモンの分泌量を300倍と公言しているジムもあるほどです。
有酸素運動
有酸素運動もまた、成長ホルモンを増加させます。筑波大学 生命領域学際研究センターの発表によると、 高齢者の座りがちな女性は、体内で一酸化窒素を十分に産出できない、という仮説を元に、 週5日、1回30分、比較的穏やかなエアロバイクの運動を3ヶ月行ったところ、 一酸化窒素の量が大幅に増加した、と発表しています。
一酸化窒素には、 「血管を拡張させ血流を良くする働き」、「成長ホルモンの分泌を促進する働き」があるため、 定期的な軽い負荷の運動により、成長ホルモンを増加させる効果があります。
運動による疲労回復効果については、 なぜ運動で疲労が回復するのかを、 また、血流改善による疲労回復効果については、 血流改善で疲労回復をご参照下さい。
食事
タンパク質を多く摂ることで、成長ホルモンの分泌が促進されることはないものの、 成長ホルモンの生成には、タンパク質は必須となります。
菜食主義や偏食による栄養の偏りは、成長ホルモンの生成に必要なタンパク質が不足する場合があります。
また、チョコレートやココアに含まれるカカオには、 一酸化窒素の産出を増加させ、成長ホルモンの分泌を促進するフラバノールが含まれます。
チョコレートの疲労回復効果については、 チョコレートで疲労回復?をご参照下さい。
アルギニン、オルニチン
アルギニンは成長ホルモンの阻害因子となるソマトスタチンの放出を抑制する効果や、 成長ホルモン合成の元となる一酸化窒素は体内において、アルギニンから合成されるからです。
ただし、これら栄養素には成長ホルモンの分泌を促す学術的研究資料は存在しない、 とする主張も存在します。
アルギニンの疲労回復効果については、 アルギニンの疲労回復効果をご参照下さい。
IGF-1サプリメント
IGF-1(インスリン様成長因子)を直接摂取できるサプリメントも販売されています。IGF-1(インスリン様成長因子)は胃で消化されるとタンパク質に戻ってしまうため、 舌下吸収するサプリメント(口内で飴のように消化)やスプレーの形で販売されています。
商品に対する評価は様々で、人によっては効果があったとする一方、人によっては全く効果がなかったとしています。
アメリカで認可、販売されているため、安全面での心配はあまりないものの、 運動、睡眠、空腹で分泌される量と比較すると、舌下投与によって吸収される成長ホルモンの量はあまり多いとは言えないようです。
成長ホルモン注射
成長ホルモンの様々な効果が認められるようになったのが、美容業界で行われている注射による成長ホルモン補充です。成長ホルモンは人工で合成できるようになったことから、値段はじょじょに下がってきたものの、 成長ホルモン分泌不全症以外の人には保険適用外のため、疲労や健康、アンチエイジング目的の場合、 一ヶ月あたり最低でも数十万円の費用がかかり、庶民にはなかなか手が届きにくい商品となっています。
成長ホルモンの阻害
成長ホルモンは上記方法で分泌が促進されるものの、 以下の内容によって分泌量が減ってしまいます。年齢
成長ホルモンの分泌量は思春期にピークに、20代から低下してしまいます。30代では、1/4~2/3に、 40代は1/5~1/2に、 60代では1/10~1/3にまで減ってしまいます。
ストレス
ストレスは成長ホルモンの大敵です。ストレスはコルチゾールの分泌を促しますが、 コルチゾールは成長ホルモン阻害因子であるソマトスタチンの分泌を促し、 成長ホルモンやIGF-1(インスリン様成長因子)の分泌を阻害します。
コルチゾールとストレスについては、副腎疲労や 精神的ストレスをご参照下さい。
薬・病気
薬の中には成長ホルモンの分泌を阻害することが明らかになっているものが数種類存在します。また、成長ホルモンが低血糖や睡眠によって分泌されるということは、 言い換えると高血糖や睡眠不足は分泌量の不足につながります。
血糖値が高くなると、体がだるいと感じたり、睡眠時間が短いほど太りやすいのは成長ホルモンが関係しているかもしれません。
お酒
成長ホルモン、特にIGF-1(インスリン様成長因子)は肝臓で作られますが、 肝臓が弱っていたり、アルコールの分解に使われると、肝臓そのものの機能が低下するため、 成長ホルモンの分泌が阻害されます。そのため、肝臓を健康に保つことは成長ホルモンだけでなく、 疲労全体を制御するのに非常に効果的です。
肝機能低下と疲労については、 肝臓機能低下の症状・原因・回復方法 をご参照下さい。
成長ホルモンによる副作用
疲労回復だけでなく、アンチエイジングにも効果のある成長ホルモンですが、 分泌量が多すぎるといくつかの副作用が発生する可能性があります。また、細胞そのものが若いことは、言い換えるとがん細胞などの成長速度も早くなることがあります。
- 筋肉のけいれん
- 甲状腺機能亢進症
- ネフローゼ症候群
- 糖尿病
成長ホルモンの増やし方 先頭へ |
関連ページ |
メニュー・目次一覧へ |