疲労の原因「食物不耐症」
疲労の原因の一つに「食物不耐症」があります。食物不耐症とは、「非アレルギー性食物過敏症」ともいい、特定の食物を消化することが困難な病気です。
人は食べ物をエネルギーに変えるため、消化、吸収、分解・合成など一連の代謝を必要としますが、 この代謝に必要な「酵素」が食べ物ごとに決まっています。
身近な例ですと、アルコールを分解するアルコール脱水素酵素(ADH)、脂肪酸を分解するホスホリパーゼ、 乳糖を分解するラクトースなどです。
しかし、これら食品の分解に必要な酵素がないと、その食べ物を摂取しても消化できないため、 疲労などの様々な症状が出てしまいます。
ここでは、疲労の原因となる「食物不耐症(狭義)」について、 特徴と改善方法などについて紹介しています。
また、食物不耐症と似ており、同様に疲労症状が出る遅延型食物アレルギーについては、 遅延型食物アレルギーが疲労の原因をご参照下さい。
食物不耐症とは
食物不耐症は食品アレルギーとは異なる
食物不耐症をもつ人の症状は、食品アレルギーを持つ人と共通の症状が出ることがあり、 病院でも食物不耐症を食品アレルギーと誤診されることは珍しくありません。しかし、食物不耐症と食品アレルギーは異なる病気です。
食物不耐症と食品アレルギーの違い
食物不耐症 | 食品アレルギー |
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「広義の食物不耐症」と「狭義の食物不耐症」
食物不耐症という語彙が使用される場合、「広義の食物不耐症」と「狭義の食物不耐症」の2つの意味があります。「広義の食物不耐症」は、「セリアック病」、「アレルギー(即時型)」、「アレルギー(遅延型)」、「食物不耐症(狭義)」などの全てを含め、「食べ物によって何らか(病的)症状が出る」場合を示します。
「狭義の食物不耐症」は、乳糖不耐症やアルコール不耐症に代表されるように、 「酵素不足、欠如など消化異常を原因」として、セリアック病やアレルギー(即時型・遅延型)とは明確に区別されます。
有症率は20%程度で、先天性・後天性の両方がある
食物不耐症は国や人種によって異なるものの、20%程度の人がなんらかの食物不耐症を持っていると言われています。特に日本では、遺伝的にアルコールを分解するアルコール脱水素酵素(ADH)が弱い人が5%程度存在し、 これは他国、他人種と比較しても多くなっています。
また、全世界の75%の人々において、成人以降、 乳糖不耐症の原因であるラクターゼが減少すると言われています。
このように、食物不耐症は生まれつき酵素が欠如している先天性の場合と、成長とともに減少していく後天性の両方があり、 また、発症は男性より比較的女性の方が多いといういくつかの研究結果が存在します。
オランダやイギリスで行われたアンケートとその後の追加調査によると、 おおよそ20%程度の人が何らかの食物不耐症を持っているとされています。
主な食品と食物不耐症
乳糖不耐症 | 牛乳やヨーグルト、チーズなどに含まれる乳糖を消化するラクターゼの不足・欠如が原因。先天性と後天性の両方が存在します。 乳糖不耐症の最も顕著な症状は下痢です。 |
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グルテン不耐症 | 小麦などの穀物粉に水を加えることで発生するグルテンに対する不耐症によって引き起こされます。 グルテンを引き金に起こるセリアック病と発症メカニズムや症状が酷似しているものの、 セリアック病ほど病状は深刻にはなりません。 セリアック病と明確に区別するため、「非セリアックグルテン感受性」とも呼ばれます。 小麦以外に、お米、大豆など様々な穀物とその加工品であるラーメン、パスタ、お好み焼きなどが原因となります。 小麦、グルテン、セリアック病については、セリアック病・小麦が疲労の原因をご参照下さい。 |
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クエン酸不耐症 | 野菜や果物、食品添加物に含まれるクエン酸の消化不良が原因です。
クエン酸不耐症は先天的にクエン酸を消化する身体能力が欠如している場合が多いようです。 ソフトドリンクやビールなどの防腐剤にも使用されることがあるため、商品の選別にかなりの注意が必要です。 |
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卵白不耐症 |
卵のうち、特に卵白に対する不耐症で、黄身に対する卵黄不耐症よりも多く、一般的です。 |
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レクチン不耐症 | 豆類、野菜(トマト、ジャガイモ、グリンピース、インゲン、大根、キュウリ、ピーマン、ズッキーニなど)、穀物(大麦、小麦、ライ麦など)、一部のフルーツ、きのこ、ナッツ類など、非常に多くの食べ物に含まれる成分です。 同じ食べ物であっても、生産地や調理法によりレクチンの含有量は大きく異なります。 (※加熱すると毒性を減らすことができます。) 主な症状は下痢で、その他、吐き気、膨満感、嘔吐を伴います。 レクチン不耐症でない人であっても、高レベルのレクチンを摂取すると、食中毒を引き起こします。 |
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その他食物不耐症 | エタノール(アルコール)、アスピリン、インシュリン、カフェイン、果糖、炭水化物、キャベツ、赤ワイン、いちご、チョコレート、人工甘味料、防腐剤、人工着色料、抗酸化物質など多岐に渡ります。 |
主な症状
食物不耐症は消化異常、特に消化できないことが原因のため、消化管系の症状が多いものの、 中枢系の症状など食品や人によって様々な症状が出ます。以下食物不耐症の一般的な症状です。
食物不耐症の主な症状
中枢系 | 消化管系 | 全身系 |
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なぜ食物不耐症が疲労の原因になるのか
食物不耐症の症状の一つに疲労感が挙げられます。 理由は完全に明確になっていないものの、いくつかの推測があります。消化を妨げる
食物不耐症はそもそも消化できないことが原因で起こる病気です。一方身体はそれを消化あるいは排除しようと膨大なエネルギーを消費します。
場合によっては睡眠中も消化あるいは排除のため、身体からエネルギーを消費しています。
このエネルギーの浪費によって疲労感につながるのでは、と推測されています。
気づかず疲労がたまる
食物不耐症は症状が遅れて発症することや、食べ物によっては毎日摂取すること、および、症状の多くは生命を脅かす程ではないため、 食物不耐症と気付かず放置されることが多いようです。そのため、疲労感が慢性的になり、それが当たり前になっている場合があります。
慢性疲労患者が牛乳、グルテンなど一般的な食物不耐症の対象となる食品の摂取を停止したところ、 疲労を始めとするいくつかの症状が突然なくなることは珍しくありません。
食物不耐症を改善して疲労解消
食物不耐症かどうかの発見は食物アレルギーよりも難しいとされています。理由はアレルギー反応のようにすぐに症状が出ないため、診断に時間がかかるためです。
また、食物不耐症の治療法は残念ながら見つかっていません。 そのため、食物不耐症の症状を抑える方法は、今のところその食べ物を摂取しないこと以外ありません。
しかし、その食べ物を摂取しなければその症状が出ることはないため、対象となる食物を特定することが重要になります。
専門医で診断を受ける
医院によって異なるものの、水素呼気検査やELISAテストなどいくつかの食物不耐症を発見するための診断方法が存在します。食品ごとに診断方法は異なり、時間がかかるものの、確実に発見するためのヒントをもらえます。
食事をメモする
医者でも薦められる方法が食事メモです。食物不耐症はその症状の発現に時間がかかるため、特定が困難なものの、ある程度の相関関係を発見することができます。
そこからヒントを得ることが、対象食物の発見につながるとされています。
特定の食品を数日間避ける
この食物かもしれない、とある程度推測できたら、 数日間その食品の摂取を断つことです。最初の数日は症状がでるかもしれませんが、その後症状が改善されればその食べ物が不耐症の原因です。
期間は5日程度で十分で、発見できればその食物を避けることで症状の発現を抑えることができます。
また、残留痕跡を完全に除去するためには、2週間程度かかると言われています。
ただし、断食のように全ての食物を断つことは食物不耐症の症状改善には役立つものの、特定食物の発見にはつながらないため、 良い方法ではありません。
少量にする
食物不耐症は少量では症状が出にくいことが多くなっています。どうしても食べたい場合は少量摂取なら問題ないかもしれません。
ただし、人によっては少量でも症状が出ることがあるため、注意が必要です。
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