女性に多い疲労の原因
女性特有の疲労、または、 男性と比較して明らかに女性の発症数が多い疲労の原因がいくつかあります。妊娠、出産、更年期など、 女性特有の出来事には必ず疲労感がつきものですが、 これらはホルモンバランスの乱れによって生じます。
また、近年の女性の美意識の向上により、 ダイエットは栄養不足や低体温症の原因となるほか、、 紫外線防止による日光不足は、 睡眠障害、ビタミンD不足などの疲労の原因となります。
ここでは、 女性に多い疲労を8つ取り上げ、 その症状、原因、回復方法について、紹介しています。
妊娠
妊娠に伴う疲労症状
主に甲状腺ホルモン | 主に副腎皮質ホルモン | 主にプロゲステロン | その他 |
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妊娠中は、ほとんどの女性が疲労を発症します。
この妊娠による疲労は、ホルモンの分泌量の増加によるものです。
甲状腺ホルモンの増加は発汗、めまい、うつ、イライラ、不安感といった症状を引き起こし、 妊娠初期の症状として多くの人に見られます。
また、副腎皮質ホルモンであるコルチゾールの分泌量も多くなるため、 常に抗ストレス状態となることから、 疲労感、倦怠感、不安感、睡眠障害などの症状が出やすくなるほか、 プロゲステロンの増加は、昼間の眠気や過眠を誘います。
その他にもホルモンバランスの乱れにより、 吐き気、嘔吐、傾眠、便秘といった症状や、 胎児へ血液を供給するため、血液が不足し、 鉄分不足、鉄欠乏性貧血が起こりやすくなります。
妊娠後期には赤ちゃんの重量そのものによる肉体疲労や、 お腹が出てくることが睡眠の姿勢にも影響することから、不眠を発症することもあります。
また、疲労による体力の減少と胎児への思いやりは、 できることが減ったり、やりたいことを抑圧する結果となり、 肉体疲労よりも精神疲労が辛い、という女性も珍しくありません。
副腎疲労については、副腎疲労が疲労の原因を、 不眠症については、不眠症解消方法一覧をご参照下さい。
回復
周りの理解、特にパートナーの理解が必要です。また、疲労症状が重い場合にはかかりつけの産婦人科に必ず相談するようにします。
妊娠期の疲労回復はしっかり栄養、睡眠を取ることと、適度な運動が必要です。
栄養は貧血を避けるために鉄分をしっかり取るほか、 血糖値の一時的な上昇はさらなる疲労へとつながるため、 甘いお菓子や過剰な糖分はなるべく避けた方が懸命です。
また、カフェインは胎児へ悪影響があるため、 コーヒなどのカフェイン含有飲料は避けた方が無難です。
その他、エネルギーを十分に作り出せるよう、必須栄養素であるビタミンB、ビタミンCが必要です。
水分不足は脱水により疲労感を生じるため、特に夏場は十分に取るように注意が必要です。
甲状腺の問題
甲状腺疾患は男性と比較して特に女性に多い病気です。その発症率はおおよそ男性の1.5倍~8倍(国や調査機関により異なる)にも達します。
日本内分泌学会が発表している「甲状腺機能異常を示す患者総数」によると、 甲状腺の自己抗体検査(Tg、TPO)が陽性の割合は、 女性では24.7%(約4名に1人)と多く、 「約2,385万人が潜在的な甲状腺疾患(殆どが橋本病?)を有することになる」と発表しています。
甲状腺の病気、症状、原因、診察などについては 甲状腺機能低下症をご参照下さい。
更年期
閉経前、更年期、閉経後と身体の変化に伴い、特有の様々な症状が現れます。特に閉経前の疲労感は、 ほてりと並んで更年期障害の最も一般的な症状です。
疲労以外にも睡眠障害、易疲労感、過敏症、気分障害、不安、うつ病などの心理的変化や、 骨格、皮膚、泌尿器、生殖器など身体的変化を伴います。
なぜ更年期に疲労
更年期の疲労は主に女性ホルモン、エストロゲンの欠乏(プロゲステロンとする説もあり)が原因です。厚生労働省によると各種症状が発症するかどうかは、 この「エストロゲンの欠乏」以外に、 「本人を取り巻く環境」、「本人の気質」の3つが相互に作用して発症するとされています。
閉経前の数年間は、エストロゲンとプロゲステロン両方の産生が減少し始めるため、 月経に変化がないにも関わらず、 ほてりなどの症状が早期に現れる場合もあります。
更年期障害の各種症状については、 更年期障害の症状と特徴をご参照下さい。
回復方法
更年期の疲労の回復方法
医療 | 代替医療 |
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更年期症状は、対症療法では改善しにくい、とされています。
現在各種医療機関で受けられる治療法はホルモン補充療法(HRT)、プラセンタ療法、漢方薬、抗うつ薬などです。
ただし、ホルモン補充療法の保険適用は天然ホルモンでなく合成ホルモンを使用するため、いくつかの問題点もあります(ホルモン補充療法のリスク)。
その他、代替医療として、DHEAや植物性エストロゲン、大豆イソフラボンなども効果があります。
DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)は男性ホルモンの一種であるだけでなく、 エストロゲンの前駆体として利用され、 女性の不妊治療薬や副腎不全の治療などにも利用されています。
大豆イソフラボンなどの植物性エストロゲンは、 その構造がエストロゲンに似ていることから、体内でエストロゲンのように作用し、 更年期障害のいくつかの症状を緩和してくれます。
詳しくは更年期障害とイソフラボンなどの効果をご参照ください。
また、カフェインは更年期のほてり、寝汗を悪化させるため、なるべく摂取を控えます。
カフェインについては、カフェインは疲労の原因?をご参照下さい。
鉄欠乏性貧血
また、女性の貧血のほとんどが、この鉄欠乏性貧血と考えらています。
原因は月経により慢性的な流血があるため、 男性よりも多くの鉄分を必要とするからです。
鉄欠乏性貧血は鉄分を十分に摂取することで改善します。 鉄欠乏性貧血については、鉄分不足ご参照下さい。
子宮内膜増殖症
子宮内膜に似た組織が子宮以外に発生する病気です。女性全体の10%程度と発症率も高く、 出血のほか、腹部や骨盤の痛み、排便や性交での痛みなど様々な症状を発する場合もありますが、 人によっては無痛の場合もあります。また、月経前と月経中に症状が悪化します。
病気が進行すると子宮内膜が増殖し、癌になることもあります。
治療法は自然治癒することもあり、経過観察の場合や、 黄体ホルモン療法、子宮内膜掻爬術、 症状がひどい場合には子宮摘出の場合もあります。
日光不足に伴う各種疾病
美容意識の高まりにより、紫外線(日差し)を避けることが多くなっています。日光には疲労を抑制する様々な効果があることが分かっているだけでなく、 日光が不足すると、概日リズム睡眠障害や季節性情動障害、 うつ病といった疲労を伴う各種疾患を発症しやすくなります。
また、日光が不足すると、日光によって作られるビタミンDが不足しがちになります。
ビタミンDは日光による生合成以外に食事からも摂取できるものの、 そのほとんどが魚介類からの摂取になるため、 欧米食が多い場合、ビタミンDが欠乏しやすくなります。
日光の疲労への効果や、 どの程度の日光を浴びれば良いかについては 日光や自然で疲労回復をご参照下さい。
ダイエット
その他女性に多い疲労の原因が、ダイエットです。ダイエットや食事制限は栄養不足を引き起こし、 エネルギー産出量を低下させるため、慢性的な疲労を引き起こします。
特にビタミンBやビタミンCなどの水溶性ビタミンは日々補充しないと枯渇する栄養素であり、エネルギーの産出に欠かせません。
また、ダイエットによるカロリー制限は、 低体温症、基礎代謝の低下、若年性更年期障害の原因にもなり、 さらなる疲労へつながります。
詳しくは、 低体温症の原因と改善方法、または、 若年性更年期障害の原因と治療をご参照下さい。
冷え性
冷え性も女性に多い症状の一つです。血流は栄養素と酸素を各器官に運ぶ重要な役割を持っているため、 冷え性によって血流が悪くなると、 各臓器や細胞が本来の機能を発揮できません。
そのため、栄養を十分に摂取してもその栄養を運ぶことができないため、 疲労や他の身体不調を訴えることが多くなります。
冷え性を始め血流改善については、血流改善で疲労回復をご参照下さい。
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