肝臓機能低下の症状・原因・回復方法

疲労の原因~肝臓

疲労の原因~肝臓
肝臓疾患を有する患者において、疲労は最も一般的な症状です。

しかし、肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるように、神経が通っていないため、 多少の痛みや機能低下ではほとんど自覚症状はありません。

それ故、ほとんどの人は知らず知らずに肝臓を酷使し、機能を低下させている恐れがあります。

ここでは肝臓と疲労の関係について、なぜ肝臓機能低下が疲労を引き起こすのか、 肝臓の機能と役割、回復方法について、紹介しています。

肝臓の機能低下の症状

肝臓の機能低下や疾患は、肝臓そのものの痛みとしては現れないものの、 他の箇所に症状が現れます。

特に黄疸は肝疾患の最も典型的な症状です。

肝臓は古くなった赤血球を破壊し、胆汁中に捨てる作用がありますが、 肝臓の障害によってこの機能が正常に働かず、破壊した赤血球で作られたビリルビンという黄色い色素が胆汁でなく、血液中に漏れてしまうため黄疸を発症します。

黄色人種の場合、肌で見分けがつきにくく、眼の黄色みが分別しやすいとされています。

肝臓の機能低下の症状
もっとも特徴的な症状 疲労症状 食欲・腹・便・尿 その他
  • 黄疸
    (眼球や皮膚が黄色くなる)
  • 身体がだるい
  • 倦怠感
  • 脱力感
  • 微熱
  • 過度の眠気
  • 不眠
  • 体重減少
  • 食欲不振
  • 吐き気
  • 膨満感
  • 急にお酒に弱くなる
  • 脂肪便
    (便の色が白い)
  • 尿の色が黄褐色
  • 身体のかゆみ
  • 爪が白くなる
  • 出血しやすくなる
  • 手のひらが赤い
  • 赤いクモ状の班点
  • 乳首にしこり
  • 肌荒れ、シミが増えた
  • 足のむくみ、だるさ
  • 息切れ

肝臓機能が正常か、調べる方法

黄疸やその他症状が出てからでは、手遅れになる場合があるため、 心配な場合は、「献血」や「健康診断」による血液検査で肝臓に問題は無いか、簡単に調べることができます。

ここでは無料、かつ、比較的すぐに受診できる「献血」を元に、肝臓機能の損傷がないか、チェック方法を紹介します。

献血(生化学検査項目)のうち、肝臓機能に関する項目
検査項目 正常値 意味
ALT(GPT) 5~45(IU/L) 肝臓に最も多く含まれる酵素です。
この数値が高いことは、肝臓が傷ついてALTが血液中に漏れ出していることを意味します。
原因には、以下の様なものが想定されます。
  • 慢性(急性)肝炎
  • 脂肪肝(メタボリック)
  • 肝硬変
  • アルコール性肝疾患
  • 薬(抗生物質、アレルギー薬など)
  • その他肝臓疾患
ただし、激しい運動後の一過性の上昇や、 成長期の子供では軽い上昇が見られますが、それらは正常と判断されます。

反対に値が低い場合、他の血液検査の結果を考慮する必要があるものの、 「栄養不足」、「尿路感染症」などが疑われます。
γ-GTP 10~65(IU/L) 肝、胆道、膵、腎などに多く含まれる酵素です。
この数値が高いことは、以下の原因が想定されます。
  • 閉塞性黄疸
  • 肝炎
  • アルコール性肝疾患
  • 胆汁うっ滞
  • 原発性胆汁性肝硬変
  • 胆石
  • 胆道閉塞
  • 肝臓への血流の欠如
  • 心不全
  • 抗真菌剤や抗うつ薬の使用
  • 糖尿病
特に病気がなくても、 長期飲酒者では上昇することが多く、 1カ月くらい禁酒するとある程度正常化します。
また、喫煙もγ-GTPを上昇させる要因となります。
ALBアルブミン 3.9~5.0(g/dL) アルブミンは肝臓で作られるタンパク質です。
この数値が低いと、肝臓の機能が低下している可能性があります。
  • 肝がん
  • 肝硬変
  • 劇症肝炎
  • ネフローゼ症候群
  • 腎疾患
  • 栄養失調
  • セリアック病
血清蛋白の50%以上を占めるアルブミンは、病気などで栄養が悪くなると減少するため、 健康診断のスクリーニングとして大きな意味があります。

数値が高い場合には、「脱水症状」、「高タンパク食生活」などが疑われます。
PLT(血小板数) 14万~38万(/μL) 血小板の数が通常より少ない状態を「血小板減少症」と呼び、 通常より多い状態を「血小板増加症」と呼びます。

血小板の異常は白血病が真っ先に疑われるものの、 肝臓も大切な役割を担っているため、肝臓の障害も疑われます。
  • ウイルス性肝炎
  • 肝がん
  • 肝硬変
  • 白血病
  • 再生不良性貧血
  • 特発性血小板減少性紫斑病
  • 真性多血症
  • 薬(アスピリンなど)
その他 献血時に申請することで、「B型肝炎」、「C型肝炎」のウイルス検査結果も知らせてもらうことができます。
参考:日本赤十字社

なぜ肝臓が疲労を引き起こすのか

肝臓疾患患者の多くは疲労を伴います。
胆汁うっ滞患者のうち、疲労症状を伴う人は65~85%と非常に多く、 難病とされる原発性硬化性胆管炎においては50%の人が極度の疲労により生活することさえ、非常に困難になります。

肝炎や他の肝疾患の疲労発症率は明確ではないものの、多くは疲労や倦怠感を伴います。 原因は以下肝臓の機能低下によるものです。

  • 解毒:血液からのアンモニアや異物を除去
  • エネルギー代謝:炭水化物、脂質、タンパク質など
  • 神経伝達物質のレベル低下

肝臓の機能が衰えると、これらの役割を適切に果たすことができず、結果として倦怠感、頭がどんより、傾眠、不眠などの疲労症状が現れます。

解毒

肝臓は血液をきれいにしてくれます。
肝臓の解毒作用により血液内の有害ウイルス、細菌、異物が取り除かれます。
解毒によって綺麗になった血液はよりよい血液循環により、より多くの栄養素と酸素を運ぶことが可能となり、 体のだるさ、エネルギー補給、疲労症状を軽減してくれます。

また、肝臓はアンモニアの解毒も行いますが、このアンモニアは疲労物質として注目されています。

代謝

肝臓は炭水化物、脂質、タンパク質をエネルギーに変えるのに、重要な臓器です。
特にグリコーゲンを貯蔵し、必要に応じて血中グルコースとして放出し、血糖値の調整を行いますが、 これがうまく働かないと疲労感が出やすくなります。

また、損傷を受けた肝臓、働きが弱まった肝臓は、 十分に胆汁酸塩を作ることができないため、 脂肪や脂溶性ビタミン(A、D、E、K)の吸収が妨げられます。
その結果、脱力感が生じ、症状がひどくなると脂っぽく悪臭がする便(脂肪便)や食欲減退がみられる場合があります。

その他、筋肉活動で重要な役割を果たすクレアチンの生合成も腎臓と肝臓で行われています。

神経伝達物質のレベル低下

肝臓の疾患や機能低下により、疲労に重要な影響を与えるCRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)、 セロトニン、ノルアドレナリンの分泌が低下するという仮説や研究結果があります。

これらはまだ胆汁うっ滞患者や肝疾患治療薬に限定され、かつ動物実験における仮説段階ではあるものの、 肝臓機能の低下が神経伝達物質の低下を招き、それが疲労、特に精神疲労、脳疲労を引き起こしているとされています。

肝臓の機能回復

肝臓機能の低下による疲労が原因の場合、いくつかの方法により肝臓そのものの回復が可能です。
正常な肝臓の場合、3/4を切り取っても残った肝臓が新たに細胞を作り肝臓を再生してくれます。

肝臓に良いものを食べる

破壊された肝臓の機能修復に使われる栄養素を取ったり、肝臓に良いものが効果的です。
肝臓に良いとされる栄養素の一例です。
  • アラニン
  • オルニチン
  • タウリン
  • スルフォラファン
  • セサミン
  • オメガ3脂肪酸
  • ビタミンB
また、食品では、スルフォラファンを多く含む「ブロッコリー」や「芽キャベツ」などのアブラナ科の野菜、 肝臓の解毒を助けるアリシンが含まれる「ニンニク」、「玉ねぎ」、 フラボノイド効果やペクチン効果により肝臓の炎症を防いだり、浄化する「りんご」「グレープフルーツ」などが良いとされています。

鉄分、脂質を控える

鉄分は肝臓の機能を弱めます。
鉄分の多い食品を控えることで肝機能が改善することが多数報告されています。
そのため、鉄分が多く含まれる食品は控えた方が良いかもしれません。
また、お茶やコーヒーに含まれるタンニンは鉄分の吸収を阻害してくれるため、 鉄分が多い食事をする場合、お茶やコーヒーと一緒に取るのが効果的です。

禁酒・断酒

アルコールおよびアセトアルデヒドなどお酒の分解は肝臓に過度の負担をかけます。
また、アルコール性肝疾患の行き着く先は「肝硬変」です。

厚生労働省の発表によると、 日本酒で約7合(約1.26L)を毎日10年以上飲み続けた場合約20%、 15年以上飲み続けた場合では約50%に肝硬変が生ずると発表しています。

また、厚生労働省による多量飲酒者の定義は一日あたり「日本酒3合(約540ml)=アルコール約60g」を飲む人としており、 適量を「アルコール約20g以下=日本酒0.9合以下」、最も死亡率が低い人を「アルコール9g以下=日本酒0.4合以下」としています。

上記を鑑みながら、 お酒の量を減らす、回数を減らす、よりアルコール度数の低いお酒に変える、人によっては断酒することは、肝臓の元気を取り戻す非常に効果的な方法です。

減量

太りすぎは肝臓の負担が大きく、肝疾患の発症率を高めます。

そのためダイエットは肝機能回復には効果的なものの、 肝臓を休めることが目的のため、 ささみなどタンパク質が多い食品を用いたダイエットは、 「肝臓が休まらない」、「損傷した肝臓では処理できない」ため、 逆効果になる場合があります。

減量する場合、 運動やタンパク質の制限を設けた減量方法が肝臓には良いようです。

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