セリアック病・小麦が疲労の原因

セリアック病・小麦が疲労の原因

セリアック病・小麦が疲労の原因
セリアック病とは、「グルテンを摂取すると、 小腸が敵が侵入して来たと勘違いし、 自らの小腸を傷つけてしまう自己免疫疾患」です。

また、 グルテンとは、小麦、大麦、ライ麦などに水分を加えることでできるタンパク質で、 ラーメンの麺、うどん、パスタ、パン、ケーキなど、ほとんどの小麦加工品に含まれています。

和食だけでなく、洋食や中華が当たり前となった現代食において、 グルテンを摂取しない機会は非常に少なく、 知らず知らずに疲労を溜めこんでいる場合があります。

ここでは、セリアック病を中心に、小麦、グルテンがなぜ疲労の原因になるのかについて、 紹介しています。

小麦が原因となる疲労

小麦あるいは小麦加工品が原因となる、疲労を伴う病気は以下の通りです。

小麦が原因となる疲労を伴う病気一覧
  • セリアック病
  • 小麦アレルギー
  • グルテン(小麦)不耐症

「セリアック病」と「小麦アレルギー」、「グルテン(小麦)不耐症」の違い

セリアック病と、小麦アレルギー、グルテン不耐症はしばしば混同されます。

広義の「不耐症」は多くの場合、「セリアック病」、「非セリアックグルテン感受性(当サイトで使用するグルテン不耐症)」、「小麦アレルギー」の全てを含めます。

狭義の意味で「不耐症」が利用される場合、 「セリアック病」、「小麦アレルギー」、「小麦(グルテン)不耐症」の違いは以下の通りです。

セリアック病、小麦アレルギー、グルテン不耐症の違い
セリアック病
  • グルテンに反応
  • 小腸の損傷を特徴とする自己免疫疾患
  • 検査には「IgA」抗体検査が利用される(後述)
小麦アレルギー
  • 小麦に含まれるタンパク質に反応
  • 小麦に対する免疫反応が原因(小腸だけではない)
  • 検査には即時型アレルギー反応(igE)、 遅延型アレルギー反応(igG)が利用される
グルテン(小麦)不耐症
  • 非セリアックグルテン感受性とも呼ばれる
  • 酵素不足・欠如などが原因
  • 抗体検査では発見できない

アレルギーと不耐症については
参考:

セリアック病の症状

セリアック病の症状
セリアック病は軽い症状の患者と重い症状の患者がいるため、 同じセリアック病を患う人でも、その認識は異なります。

重度になると、脂肪便や過敏性腸症候群などの症状が現れるものの、 症状が軽い場合、セリアック病だと気づかない人も多いようです。

■胃腸
  • 慢性の便秘、下痢
  • 脂肪便
  • 腹痛
  • 腹部膨満感
  • 過敏性腸症候群
  • 消化管の痛み、不快感
■その他
  • 疲労
  • 体重減少
  • 成長障害(子供の場合)
  • 骨粗しょう症
  • 貧血
  • 疱疹状皮膚炎(ほうしんじょうひふえん)
  • 不妊、流産
  • うつ病
  • 頭痛
  • 栄養不足
  • 乳糖不耐症
  • ブレインフォグ(思考に霧)

胃腸

セリアック病は、小腸の損傷を特徴とするため、胃腸に様々な症状が現れます。
その1つが慢性の下痢です。
セリアック病患者のおおよそ1/3が慢性の下痢を訴えます。
反対に、20%で便秘の症状を訴えます。

重度になると消化不良に伴う脂肪便(色が白あるいは浮いた便)となり、 悪臭があるのも特徴です。

また、胃腸の吸収が弱まることから、 患者の1/2程度で体重の減少の傾向がみられるものの、 反対の症状である肥満も10%で見られます。
(研究機関によっては小児は肥満であることが多いとする報告もあります。)

その他、 過敏性腸症候群の症状もセリアック病が原因の場合があります。

疲労

無自覚の人を含めて、多くの人に共通する症状が「疲労」、「易疲労」、「体がだるい」、「慢性疲労」症状です。

これは小腸の損傷により、栄養を十分に吸収できないことが原因の1つと考えられ、 疲労回復栄養素であるビタミンB、 鉄分の吸収不良による「鉄欠乏性貧血」や、ビタミンB9(葉酸)、ビタミンB12(コバラミン)の不足による「巨赤芽球性貧血(悪性貧血) 」なども、疲労の原因となっています。

その他

小腸で栄養が正しく吸収されないため、 子供の成長障害や、カルシウムやビタミンDの不足による骨粗しょう症、 不妊を引き起こします。

その他、グルテンが原因であるにも関わらず、 乳製品を食べたあと下痢や腹痛になる「乳糖不耐症」となったり、 ブレインフォグ(思考に霧がかかった状態)を患うこともあります。

セリアック病の有症率

世界のセリアック病の有症率は、おおよそ0.6%~1.0%程度です。

以前は日本のセリアック病の有症率は世界と比較すると、比較的低いと考えられていたものの、 欧米食の浸透により、現在では世界の有症率とほとんど変わらなくなっています。

また、アメリカの医療機関による調査によると、 セリアック病を有する人のうち、 およそ83%が未診断であるため、 自分では原因がわからない各種症状に悩まされている、と考えられています。

セリアック病の原因

セリアック病が発症する原因は、グルテンの摂取ですが、 セリアック病の多くは、先天性、遺伝性の病気です。 そのため、家族にセリアック病の病歴が認められる場合、セリアック病を発症する確率が上がります。

また、染色体や遺伝子が類似している「1型糖尿病」、「ターナー症候群ダウン」、 「自己免疫性甲状腺疾患」、「シェーグレン症候群」、「顕微鏡的大腸炎」を患っている場合、 セリアック病を併発している可能性が高まります。

その他、乳幼児期の過ごし方が、 後天性のセリアック病の原因の1つと考えられています。

具体的には、 腸が十分に発達していない生後3ヶ月以内に大麦や小麦を摂取させた場合、 セリアック病にかかる確率が5倍以上高くなり、 ロタウィルス感染(乳幼児がかかりやすい胃腸炎)、アデノウィルス感染(主にプールなどで感染する感染症)などの感染症もセリアック病の原因の1つと考えられています。

セリアック病の検査・診断

セリアック病の検査・診断は専門医や総合病院で行っており、 主に、血液検査と内視鏡検査の2つが行わます。

免疫グロブリンA(TTG-IgA)の血液検査で90%以上判定できるものの、 他の疾患や健康な人でも陽性になることがあるため(おおよそ5%)、 確認として小腸の内視鏡検査が行われます。

セリアック病の治療方法

セリアック病の治療方法は、脱グルテン食です。

症状の重篤度によって異なるものの、数ヶ月から数年で抗体レベルが改善します。
実際にグルテンフリー食を試した人は、数ヶ月で体調が戻った、とする人が多いものの、 医療機関ではその後の経過観察を含めて1年以上とする医師が多いようです。

グルテンフリー食で小腸が回復するとは限らない

ただし、イタリアの大学で行われた調査によると、 465名のセリアック病患者に対して、グルテンフリー食を平均16ヶ月試したところ、 血清学検査では83%が陰性だったにも関わらず、 小腸の機能・形態が完全に回復していた患者はわずか8%で、 少し改善した患者が65%であったものの、 それ以外の患者では、小腸そのものの機能が回復することはなかった、と発表しています。

重篤な場合はビタミン・ミネラルの補給が必要

セリアック病が重度の場合、多くの栄養素が吸収されず排出されるため、 ビタミンやミネラルの補給が必要です。

セリアック病は貧血や疲労症状、骨粗しょう症など栄養不足による症状を伴うことが多いため、 これらを予防する栄養素として、 ビタミンB(疲労)、鉄分(貧血)、カルシウム、ビタミンD、ビタミンK(骨粗しょう症)のサプリメントで補給するのが効果的です。

グルテンを多く含む食べ物、グルテンフリー食

グルテンを多く含む食べ物とグルテンフリー食については、 グルテンフリーで疲労回復をご参照下さい。

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