コルチゾールとは
コルチゾールとは、 副腎皮質で生産されるステロイドホルモンの1つで、 主にストレスと低血糖に反応して分泌されます。本来、コルチゾールも他のホルモン同様、 人間の恒常性(バランスのとれた状態)を維持するよう働きます。
しかし、コルチゾールの分泌量が一時的ではなく、 慢性的に高くなったり、低くなったりすると、 その作用が人体に悪影響を及ぼします。
ここでは、コルチゾールの主な働きと、 高コルチゾール、低コルチゾールの影響について、紹介しています。
コルチゾールの働き・作用
コルチゾールの働き
高い時 | 低い時 | |
血糖値 | 高血糖 | 低血糖 |
免疫力 | 弱める | 強める |
筋力 | 減少 | - |
骨の形成 | 減少 | - |
記憶・脳 | 低下 | - |
不眠 | 増加 | 増加 |
コラーゲン | 低下 | - |
寿命 | 減少 | - |
血糖値の維持
コルチゾールは 低血糖時に「肝臓での糖新生(糖分以外からグルコースを産出)を促す」ことで、 血糖値の維持に貢献しています。コルチゾールと、グルカゴンやアドレナリンの作用により、 血糖値は必要以上に低下せず、一定値に保たれています。
コルチゾールが高すぎると
コルチゾールは、血糖値を上げる働きがあるため、 慢性的にコルチゾールレベルが高過ぎると、「血糖値の上昇・高血糖」をもたらします。そのため、慢性的な高ストレス環境は、 高血糖により、血流悪化、動脈硬化、糖尿病などの原因となります。
イタリアのミラノの大学で行われた研究においても、 2型糖尿病と高コルチゾールに相関関係があった、と発表しています。
コルチゾールが低すぎると
反対に、コルチゾールレベルが低すぎると、低血糖症をもたらします。理由は、血糖値の維持に必要な肝臓での糖新生が十分に行えないからです。
その結果、細胞が働くのに必要な糖分が不足し、エネルギー不足を感じたり、 低血糖の症状である手足の震え、不安、緊張などの交感神経症状や、 無気力感、判断力低下などの脳疲労症状も現れるようになります。
副腎疲労による疲労症状については、副腎疲労の症状【疲労】をご参照下さい。
免疫応答
コルチゾールの働きの1つが皮膚の炎症の抑制・緩和です。コルチゾールは、湿疹、発疹、皮膚炎、アレルギー、関節リウマチなどによる炎症を抑える働きがあり、 炎症を抑える薬(薬用成分:ヒドロコルチゾン)として、医師から処方されます。
コルチゾールが高すぎると
コルチゾールレベルが高過ぎると、免疫力が低下してしまいます。コルチゾールがステロイド薬として利用されるのは、 免疫力を低下させることで、炎症を抑制するからです。
炎症とは、体内に入った細菌やウィルスを排除するため、 免疫システムが熱や腫れを引き起こしている状態です。
コルチゾールはこの免疫力を低下させることで、 炎症を抑えるため、風邪やインフルエンザ、感染症などにかかりやすくなります。
コルチゾールが低すぎると
コルチゾールレベルが低すぎると、 免疫力が高まるため、炎症は起こりやすくなるものの、 炎症によって菌を排除するため、 傷の治療時間は短くなります。2004年、ロンドン キングスカレッジで行われた研究によると、 傷の治癒速度とコルチゾールレベルに相関関係があり、 コルチゾールレベルが低いほど、治癒時間は短かった、と発表しています。
しかし、コルチゾールが高過ぎると、 生体内で炎症を引き起こす原因物質の増加につながるため、 炎症の長期化、慢性化へとつながることがあります。
筋肉
コルチゾールが筋肉に影響を与えるのは、 血糖値の維持の影響によるものです。筋肉は合成(タンパク質の合成)と分解(筋肉を分解して肝臓でグルコースを作る)が常に行われ、 バランスを保っていますが、 コルチゾールレベルが高過ぎると、筋肉の合成を抑制し、分解を亢進します。
そのため、高コルチゾールを原因とする難病クッシング症候群の特徴的な症状は、 手足の筋力が低下し、顔や腹部のみが肥満化します。
東京大学医科学研究所の論文によると、 炎症性疾患などの治療に使用される薬理量のグルココルチコイド(副腎皮質ホルモンの1つ、コルチゾールもこの1種類)の投与が、 筋力と筋量の低下(ステロイド筋萎縮,ステロイドミオパチー)の直接的な原因にもなりうることが、 40年以上も前から知られている、と述べています。
骨粗しょう症
コルチゾールは骨の形成を減らします。そのため、コルチゾールレベルが長期に高い場合、骨粗しょう症の原因となります。
コルチゾールは、 骨形成を行う細胞(骨芽細胞)の機能を低下させ、 消化管におけるカルシウムの吸収を阻害し、 骨形成に関与するエストロゲンなどの働きを阻害するためです。
また、ステロイド薬によって引き起こされる同様の症状は、 ステロイド誘発性骨粗しょう症と呼ばれます。
記憶・脳
ストレスが長期化し、コルチゾールレベルの分泌過多が続くと、 「海馬の萎縮」、「脳細胞の減少」、「ニューロンの生成阻害」、「脳の早期老化」、 「無気力・無関心」、「アルツハイマー症の増加」、などを引き起こします。2014年に公開されたアメリカ分子精神医学ジャーナルによると、 「慢性的なストレスや高コルチゾールは、通常よりも少ないニューロンをもたらす」と、発表しています。
また、慢性的なストレスとコルチゾールレベルの上昇は、 海馬の萎縮、高齢者の認知症につながることが知られています。
反対に、副腎が疲弊しコルチゾールレベルが低下している患者は、 アドレナリンやノルアドレナリンの分泌が低下することから、 熱意を失い、無気力、無関心、不安が増大することなどが報告されています。
不眠
コルチゾールレベルが高い場合、 身体と脳の興奮状態をもたらし、この興奮状態が入眠を困難にし、良質な睡眠を妨げます。反対に、コルチゾールレベルが低下している時の典型的な症状が「低血糖症」です。
低血糖症は、熟睡に必要な血糖値を維持できないことから、夜中に何度もおきてしまう中途覚醒を促し、 熟睡を妨げます。 その結果、「眠りが浅い」、「寝てもリフレッシュしない」などの疲労症状が現れます。
その他
その他、高コルチゾールは、 コラーゲンの生成を阻害したり、寿命を縮めることなどが知られています。コルチゾールの働き 先頭へ |
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