サルコペニア(筋肉量減少)が疲労の原因
サルコペニアとは、筋肉量の減少、および、筋肉量減少による身体機能の低下です。普段あまり運動をしない人の筋肉量は、 加齢とともに減少していき、 筋肉量が減りすぎると、日常生活に支障をきたす様になります。
また、サルコペニアほど重篤ではないものの、 筋肉量の低下は、疲労、冷え性、食欲不振など、 様々な症状を引き起こします。
ここでは筋肉量減少による影響、症状、サルコペニアや筋肉量減少を判断する方法、 筋肉量増加方法について、紹介しています。
サルコペニア(筋肉量減少)とは
サルコペニア(筋肉量減少)とは、1989年アーウィン・H・ローゼンバーグらによって提唱された比較的新しい病気の概念です。加齢、病気、座りがちな生活などによって、 筋肉量、筋力(強度)が低下し、身体機能が著しく低下した状態を示します。
サルコペニアの診断基準は、病院などによって異なるものの、 以下の1の状態に、2または3の症状が出ている場合、サルコペニアと診断されます。
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若い人や中年もサルコペニア予備軍
サルコペニアの主な原因は加齢です。普段あまり運動をしない人は、30歳頃から毎年0.5~1%程度の筋肉量を減らします。
そのため、サルコペニアと診断される患者は高齢者が多いものの、 くも膜下出血や骨粗しょう症など、他の病気と同様に、若い人でも発症します。
近年、特に若い人や中年で筋肉量が著しく減少している理由は、 過度のダイエットや、座りがちな生活によるものです。
筋肉量減少の症状
サルコペニアの症状は、歩行困難、生活困難など、身体活動能力の低下です。また、サルコペニアほどの症状は出ないものの、 筋肉量が減少すると、血流が悪化することから、冷え性、易疲労感などの症状が現れ、 この筋肉量の減少を放置し続けると、 結果として、生活をする上での身体機能が奪われるサルコペニアへと発展します。
■疲労
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特に冷え性や運動や食事制限をしてもなぜか痩せない場合は、 筋肉量の低下が大きな要因となっています。
また、足は第二の心臓と言われるように、 筋肉量が増えると、 血流が良くなることから、 脳疲労が起きにくくなります。
背中の筋肉量が増えると、 姿勢が良くなることから、 自尊心が高まり、自信を持つようになり、 仕事にも影響が出るようになります。
姿勢と疲労や自尊心の関係については、 悪い姿勢が疲労の原因をご参照下さい。
サルコペニアや筋肉量減少の原因
サルコペニアの主な原因は加齢です。また、加齢以外にも、筋肉量の減少をもたらすいくつかの原因があります。
サルコペニア、または、筋肉量減少の原因
■加齢
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加齢
加齢に伴い、筋肉量は減少します。普段あまり運動をしない人の場合、 30歳頃から毎年0.5~1%程度の筋肉を減らします。
また、加齢に伴い、神経細胞(ニューロン)の減少、内蔵機能の低下、筋肉合成に必要なホルモンも減少します。
しかし、全ての高齢者がサルコペニアになる訳ではありません。
神経細胞の減少、内蔵機能の低下、ホルモン量の減少などは、 有酸素運動や後述する筋力トレーニングによって、その低下を防ぐことができます。
生活
生活習慣は筋肉量に変化をもたらします。普段からゴロゴロしている人、オフィスワークが中心の人、 運動をあまりしない人は、 筋力を維持・発達させる機会がないため、筋肉量が減少していきます。
栄養
筋肉の合成や維持に必要な栄養素がいくつか存在します。タンパク質はその代表です。 タンパク質はほとんどの食べ物に含まれるため、 不足(推奨摂取量:10~15g)することはないものの、 ダイエットや絶食の場合、不足することがあります。
また、過度なダイエットや炭水化物抜きダイエットを行うと、 糖分の不足を補うため、筋肉を分解して糖分を作り出す糖新生が起こるため、 筋肉量が著しく減少します。
そして、減少した筋肉は、自然に増えることはないため、 加齢によるサルコペニアの発現を上昇させるだけでなく、 皮肉なことに、筋肉の低下により基礎代謝が低下し、太りやすくなってしまいます。
病気
筋肉量の減少を引き起こすいくつかの病気や状態があります。がんやエイズなど身体の消耗を伴う病気の他、 筋力低下が症状として現れるする重症筋無力症、高カリウム性周期性四肢麻痺、低カリウム血症、アジソン病、クッシング症候群、 副腎疲労、 体を動かすことが困難になる慢性疲労症候群やうつ病、 その他寝たきりになることを強いられる重篤な病気です。
サルコペニアかどうか判断する方法
サルコペニアかどうかは、病院で検査することができます。 また、病院以外にも、スポーツジムやご家庭でできるいくつかの方法があります。サルコペニアの診断
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病院によるサルコペニアの診断では、 コンピュータ断層撮影(CTスキャン)、磁気共鳴イメージング(MRI)、二重エネルギーX線吸収測定(DXA)による測定が行われますが、意外と高価です。
特に、「身体機能の低下による日常生活の困難」などの症状が出ていない限り、 それほどの費用をかける必要はないかもしれません。
簡易的な検査方法は、「歩行速度」、「階段を登る」、「握力」などを ご自身の若い頃や周囲の人と比較することでも 大まかな筋肉量を測る目安になります。
その他、 スポーツジムなどに設置されている「筋肉量測定器」は、 かなり正確な筋肉量を測定できます。
この測定器の良い所は、ご自身の年齢に応じて、「手」、「体幹」、「足」など、 それぞれの部位の筋肉量が同年代と比較してどの程度減少しているか分かることです。
そのため、この数値を元に、筋肉量が減少している部位を集中的に鍛えることができます。 スポーツジムによっては、 新規会員獲得目的やサービスとして、会員でなくても、この「筋肉量測定」を無料で実施してくれる場合があります。
また、ご家庭でも簡単に骨格筋率(オムロン)、筋肉量(タニタ)を測定できる体重計も販売されています。
サルコペニア、筋肉量減少の解消方法
サルコペニアや筋肉量減少の解消方法は、 他の病気が原因の場合、病気そのものの治療が必要です。しかし、生活習慣や加齢など病気以外が原因の場合、 サルコペニアや筋肉量の減少は「筋肉量を増やすトレーニング」によって解消することができます。
有酸素運動では筋肉量は増えない
有酸素運動では筋肉量は増えません。(正確には負荷を工夫することで有酸素運動でも筋量は増えますが大幅な増加は見込めません。)
筋肉を増やす運動は「抵抗運動」いわゆる筋力トレーニングで、 筋力トレーニングを実施するときに重要なのは、 「回数」「強度(負荷)」、「頻度」の3要素です。
筋肉を増やすための重要ポイント
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同じ動作の反復回数は10回程度が理想です。
これは10回することが重要なのではなく、 「10回程度が限界となる負荷で10回すること、つまり、10回で筋肉の限界が来てそれ以上できないこと」が重要です。
この限界の負荷を3セット(2セット目以降は負荷を下げても良い)実施することが、 筋肉量を増やすのに最も適しています。
また、筋肉を増やすには、 トレーニング実施後、筋肉を数日休ませる必要があります。 この休ませることで筋肉量が増えることを「超回復」と呼び、 超回復には、48~72時間(2日~3日)程度が必要と考えられています。
そのため、トレーニングの実施回数は「2~3回/週」が、 最も筋肉量を増やすのに効果的な頻度となります。
その他、筋力トレーニング以外に、 「スロートレーニング」、「加圧トレーニング」、「アイソメトリックス」なども、 筋肉量を増やす有効な方法です。
ただし、女性で見た目をあまり変えたくない人(太い筋肉を付けたくない人)や、 高齢者や持病がある人の場合、 医師、理学療法士、ジムの認定パーソナルトレーナーなどの専門家の意見を元に、 運動計画を立てることをお勧めします。
筋力トレーニングの効果
筋力トレーニングによる筋肉量の増加は、 疲労の回復、易疲労感の解消、身体エネルギー量の増加以外にも様々な効果があります。筋力トレーニングの効果
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クインシー大学で行われた調査によると、 10週間の簡単な筋力トレーニングにより、高齢者の基礎代謝がおよそ7%増加したと発表しています。
その他、筋力トレーニングはインスリン感受性を改善することにより、2型糖尿病の予防と管理を支援します。
また、血流が良くなり、成長ホルモンを大量に分泌することから、 易疲労感の改善だけでなく、脳疲労回復、認知機能の向上、冷え性改善など、身体の様々な機能を改善します。
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