精神的ストレスと疲労解消法
精神的ストレスは疲労の大きな原因です。心のケアは栄養、運動、睡眠と同様に疲労回復にとって非常に重要になっています。
しかし、鬱病や統合失調症など具体的な病気が発症しないとそのケアに注意が向けられないため、 多くの人は日々疲労をためてしまっています。
日々のストレスを溜め込んだ結果、鬱病などの精神疾患だけでなく、 副腎疲労などの臓器の疾患の発症を引き起こすことがあります。
ここでは、疲労の観点から、 なぜ精神的なストレスが疲労の原因になるのか、 ストレスに対処する3つの方法、ストレスを受けやすい人などについて紹介しています。
精神的ストレスに効果のある栄養素については、別途 セロトニンを増やして疲労回復、ストレス解消に効く漢方・ハーブ、ストレス解消に効果のあるサプリメントをご参照下さい。
ストレスとは
人間の身体は生来、ホメオスタシス(恒常性)が備わっているため、 体温、血糖値、睡眠時間など生体を常に一定のバランスに保ち続けています。特定の外部刺激がこのホメオスタシスを崩そうとすると、 身体機能を駆使して抵抗を試みます。
この身体反応をストレス反応といい、 このストレス反応が慢性化し、身体の限界値を超えバランスを維持できなくなると、うつ病などの様々な精神疾患を生じます。
ストレッサー(ストレスとなる外部刺激)は個人に依存
身体は全ての外部刺激に対してストレス反応を示すわけではありません。 その外部刺激が個人の能力を超えており、対処できないと判断した場合(認知的評価)にストレッサーとなります。そのため、同じ事象であっても、ストレッサーとなるかどうかは個人の資質に依存します。
例えば、仕事で新規営業先の開拓3件がノルマになった場合、 非常に容易に達成できるノルマであると捉える人にとってはストレッサーとはならないものの、 先月まで毎月1件しか新規開拓できていない人にとっては対処できない問題と捉えられ、ストレッサーになります。
なぜストレスが疲労の原因になるのか
ストレスが疲労の原因になるのは、ストレスに対して身体が反応した結果によるものです。運動によって筋肉が反応し疲労するように、ストレスによって身体の各臓器が反応し疲弊します。
身体はストレスに対応するため、 交感神経系の活動を活性化し、身体の各器官を戦闘態勢にします。
具体的には、 副腎皮質ホルモン(アドレナリン、ノルアドレナリン、コルチゾールなど)の分泌を増やし、 脳を覚醒させ、筋肉への血流を増やし、気道を広げ、消化管の活動を停止させるなど、 いつでもストレスに対して戦闘、または、逃避行動に移れる状態を作り出します。
このストレス反応はオーストリア(ハンガリー)の内分泌学者ハンス・セリエによると、 時間軸の経過に伴い、3つの時期(警告反応期、抵抗期、疲憊期、上図参照)に別けることができ、 交感神経が活性化することによる疲労(図赤字)と、交換神経が疲弊した結果の疲労(図青字)をもたらします。
ストレスが疲労の原因となる3つの理由
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交感神経活性化による疲労
ストレッサー出現当初は一時的にストレス抵抗力が弱まるものの、(上図:警告反応期/ショック相)、身体はストレスに対抗するため交感神経系の活動を活発にします(上図:警告反応期/反ショック相、抵抗期)。
しかし、交感神経が活発になると、脳が覚醒し緊張状態を作り出すため、常に休息をとれていない状態を作り、 また、不安や緊張により不眠や寝不足などの睡眠障害を引き起こします。
さらに、消化活動が弱まることから栄養不足による疲労感も引き起こします。
ストレス慢性化による疲労
強いストレスを長期間受け続けた時に、人はストレスの種類に関係なく「汎適応症候群」という反応を示します。それは、不安、落ち込み、緊張、無気力などの「情緒面」、集中困難、思考力低下などの「心理面」、怒り、孤立、拒食・過食などの「行動面」、頭痛、腹痛、疲労、下痢などの「身体面」に症状が現れます。
交感神経疲弊による疲労
交感神経が活性化し、ストレスに抵抗している状態は長くは続きません。ストレス反応が長期化、慢性化すると、 個人の持つ限界値を境にストレス抵抗力が低下してしまいます。(上図:疲憊期)
それはストレスに対抗するエネルギーの枯渇を意味するだけでなく、 働き過ぎた自律神経系や副腎が疲弊し、ストレスがなくなっても正常に機能できなくなることを意味します。
結果として疲労症状を伴う自律神経失調症、うつ病、副腎疲労などの疾患を引き起こします。
ストレス対処法は3種類
ストレス対処法は大きく3種類あります。ストレスの種類に応じた適切な対処と早めの対処が効果的です。
ストレス対処法
ストレッサーをなくす | 認知的評価を変える 対処能力を強化する |
ストレス反応を緩和する |
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参考:文部科学省
ストレッサーをなくす
原因となるストレッサーへ働きかけたり、逃避行動を取ることでストレスそのものをなくします。騒音の場合は防音装置を設置したり、病気の場合は治療したり、人間関係の場合は話し合いなどを用い、 ストレスそのものをなくしたり、緩和させます。
また、それらストレッサーそのものの変更が難しい場合、自分自身をストレスの無い環境へ退避させたり、 拒絶することでストレスをなくします。
認知・対処能力へのアプローチ
ストレッサーに対処できるよう、思考方法を変えたり、スキルを身につけたり、第三者の援助を得ることで対応する方法です。まだ起こっていないことに対して、不安を煽る思考をやめたり、楽観的な見方をするなど 難しい課題を細分化することで簡単な課題に変えたり、 友人、上司、善意の第三者に手伝ってもらってストレッサーに対処します。
ストレス反応を緩和する
ストレスそのものへの対処ではなく、心身の休息を得ることで、 ストレスによって生じる情緒面、心理面、行動面、身体面の不調を正したり、 ストレス抵抗性を上げる方法です。運動、睡眠・休息、栄養、リラクセーションがあります。
また、リラックスとストレス反応は、 相反する感情の反対感情を用いることでそれを抑止することができる「逆制止の原理」が成り立つため、 ストレスを解消するだけでなく、心身の回復にも効果があります。
自然によるストレス解消については、自然がなぜストレス解消に効果があるのかをご参照下さい。
運動によるストレス解消ついては、運動がなぜストレス解消に効果があるのかをご参照下さい。
ストレスを受けやすい性格を知り、疲労を回避する
ストレスは、単純な刺激応答反応ではなく、個人の資質が大きく影響します。物事に対する主観的な認知と評価により、ストレッサーとなったり、ならなかったりするため、 よりストレスを受けやすい性格の人は自分の特性を自覚し、ストレス対処法をうまく使いこなすことが必要です。
完璧主義 | 全てが完璧でないと気が済まないため、自分と他人の両方にストレスを感じます。 完璧にやろうとすればするほど当然難易度は高くなるため、失敗することの方が多く、できなかった自分に幻滅しストレスを感じます。 また、他者に対しても同様の完璧さを求めるため、他人ができないことに対してストレスを生じたり、できないことに我慢してストレスをためこんでしまいます。 |
感情抑制、受け身 |
アメリカの心理学者ダニエルウェグナーによると、感情の抑圧は必ずリバウンドが発生するとしています。 思考抑制の弊害として、ある事柄について考えないようにしようと思えば思うほど、 その事柄が頭の中に浮かんできてしまいます。 そのため、感情を押し殺してストレッサーとなるものを考えないようにしても、 それはよりストレッサーに注意を向けてしまうこととなり、問題をより悪化させてしまいます。 |
援助、気配り、真面目 | 援助や気配りができる人はその対象がなくなることで大きなストレスを感じます。 理由は、その対象者から日々感謝されることで得られる充足感がその人の糧となっていたからです。 その援助を断られることは、その人自身が否定されることと感じてしまい、ストレスになります。 同様に真面目な人も定年退職などによりその役目を終えることによる喪失感からストレスを発症します。 |
理想追求 | 理想と現実のギャップによって自己批判に陥り、現実の自分が許せなくなりストレスがたまったり、妄想の世界へ逃避するようになります。 |
悲観主義、マイナス思考 | マイナス思考は物事が起こる前から挑戦することを諦めさせます。 しかし、社会の多くの場面では挑戦することを求められ、ほんの些細な事柄でもその人にとっては挑戦し克服できないストレッサーになってしまいます。また、鬱病患者の多くは悲観主義になることが多く、多くの物事に対して実施前から挑戦する気力を奪っています。 |
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