鉄分不足が疲労の原因

鉄分不足が疲労の原因

鉄分不足が疲労の原因
疲労の原因の一つに貧血があります。
特に鉄分の不足による貧血は鉄欠乏性貧血と呼ばれ、 その患者数は200万人以上とも500万人以上とも推測されています。

貧血は脳への血流量、酸素供給量を低下させ、中枢性疲労と呼ばれる全身疲労、倦怠感、無気力などを引き起こします。
また成長記にはより多くの鉄分が必要なことから、幼児の認知力低下、学生の成績低下などを引き起こすこともあります。

ここでは疲労の観点から、なぜ鉄分不足が疲労の原因となるのか、 鉄欠乏性貧血とは、鉄分が慢性的に不足しやすい人、1日の必要摂取量、効果的な摂取方法などについて、 紹介しています。

鉄分不足が疲労の原因

鉄欠乏性貧血とは

鉄欠乏性貧血とは、鉄分不足によって起こる貧血です。
貧血は赤血球の数、大きさ、ヘモグロビン濃度などに影響を受けますが、 鉄分が不足するとヘモグロビンを作れなくなります。
その結果、赤血球1つあたりに含まれるヘモグロビンの量が減り、貧血になります。

なぜ鉄欠乏性貧血が疲労の原因となるのか

鉄分不足が疲労になるのは、ヘモグロビン量の減少によって酸素供給量が不足するからです。
脳、心臓、筋肉など身体の全ての器官は酸素を必要とし、特に脳では全酸素供給量の20~25%を消費します。

酸素が不足すると脳を始め多くの器官、細胞の活動が低下するため、 疲労感、倦怠感、眠気、無気力、集中力低下といった疲労症状が現れます。
これは鉄欠乏性貧血に限ったことではなく、脳への酸素供給は疲労を防止する上で非常に重要です。

鉄分不足はすぐには発生しない

赤血球の寿命はおおよそ120日で、その寿命が終わると赤血球は廃棄されるものの、鉄分は再利用されます。
そのため、鉄分を摂取しなくなってもすぐには鉄欠乏性貧血にはなりません。

人間が一日に失う鉄分は、年齢や性別に大きく依存するものの、成人では概ね0.8~0.9mg/1日であり、 毎日の摂取量の変化により、新たに作られる赤血球のヘモグロビン量が減っていくのみで、 すぐには鉄欠乏性貧血の症状は発生しません。

女性、妊婦、子供は鉄分が慢性的に不足する

鉄分が不足するのは、以下3つが主な原因です。
  • 出血(月経含む)
  • 成長
  • 妊娠

血には赤血球が含まれるため、出血はそのままヘモグロビン量を減らすことを意味します。
内出血や傷による出血、献血などの影響は大きいものの、それらはあくまで一時的です。

しかし、女性の月経は定期的に起きる最も大きな出血原因であり、 WHO(世界保健機関)によると、日本女性の1/4が慢性的な貧血状態であると言われており、 その原因は鉄分不足が最も多くなっています。

また、子供は体重の増加に伴い、多くの赤血球を必要とすることから成長記にはより多くの鉄分を必要とするため、 不足しがちになります。

妊婦には以下の3つの需要が伴うことから、大幅に鉄分の必要量が増加します。
  • 胎児の成長に伴う鉄貯蔵
  • 臍帯・胎盤中への鉄貯蔵
  • 循環血液量の増加に伴う赤血球量の増加による鉄需要の増加
妊婦の鉄分推奨付加量
通常の鉄分摂取に加えて、妊婦は以下の量を付加する必要があります。
妊娠初期 妊娠中期 妊娠末期
2.6mg/日 12.9mg/日 17.5mg/日
参考:厚生労働省

鉄分摂取で疲労回復

鉄分の必要摂取量

鉄分はレバーに多く含まれる栄養素です。
その他、多くの食品に少しずつ含まれるものの、多くの女性が慢性的に不足している事実から、 一日必要摂取量を満たすことはなかなか難しいようです。

必要摂取量(1日) 成人男性(※1):7.7mg
成人女性(※2):10.7mg

妊婦は上記に推奨付加量(上記参照)を加算する必要があります。
多く含まれる食品 豚レバー(100g) 13.0mg
パセリ(100g) 7.5mg
しじみ(100g) 5.3mg
その他鉄分を多く含む食品 卵(黄身)、レバー、ハツ、大豆、貝類など
過剰症状 体重1kgあたりの1日の過剰摂取量です。
具体的な摂取量はご自身の体重を乗じて計算して下さい。

成人:0.8mg/kg
3~5歳:1.6mg/kg
6~7歳:1.4mg/kg
8~9歳:1.2mg/kg
10~14歳:1.0mg/kg 体重/日

例1:40歳男性平均68.5kgの場合:54.8mg(=0.8×68.5kg)
例2:40歳女性平均53.0kgの場合:42.4mg(=0.8×53.0kg)


  • 成人では、鉄の長期摂取に伴う慢性的な鉄沈着症(鉄分の過剰な体内蓄積)が起こります
  • 鉄の過剰摂取により亜鉛の利用が低下するという報告が多いものの、耐容上限量を定めるためのデータは不十分として活用されていません
参考:厚生労働省
※1:男性の求め方:40歳平均体重68.5kgの一日平均鉄損失量(0.96)と鉄吸収率(15%)から必要量(6.4g)を求め、推奨値(×1.2)より算出
※1:女性の求め方:40歳平均体重53.0kgの一日平均鉄損失量(0.79)と月経血による鉄損失(0.55mg/日)と鉄吸収率(15%)から必要量(8.93g)を求め、推奨値(×1.2)より算出

鉄分の効果的な摂取方法

鉄分には動物や魚貝類に多く含まれるヘム鉄と野菜や大豆、卵に多く含まれる非ヘム鉄の2種類があります。
ヘム鉄の体内吸収率は概ね25~40%と高いものの、野菜などに含まれる非ヘム鉄は5~10%と非常に低く、 その差は4~5倍になります。

そのため、食物から摂取する場合、動物や魚貝類から摂取した方がより簡単に鉄分を摂取することができます。
特に日本人は鉄分の多くを野菜などに含まれる非ヘム鉄から摂取しがちなため、鉄分吸収率が悪くなっています。

一方、非ヘム鉄は吸収率は低いものの、ビタミンCと一緒に摂取するとその吸収率は2.9倍になります。
そのため、大豆や卵などを摂取するときはビタミンCが多く含まれる野菜と一緒に摂取することが鉄分の摂取には効果的です。

鉄分が不足しがちな人

鉄分の吸収を阻害するのはタンニンとカルシウムです。
お茶やコーヒー、紅茶、赤ワインなどに多く含まれるタンニンは鉄分と結合し、 タンニン鉄となり水に溶けにくくなるため、吸収が阻害されます。

ある実験では、コーヒーによって鉄分の吸収率が39%も落ちた、という報告があります。
その他、乳幼児での牛乳の過剰摂取は鉄分不足を招く恐れがあります。

また、小麦の摂取により小腸を傷つけてしまう自己免疫疾患である「セリアック病」は、 慢性的な「鉄欠乏性貧血」を引き起こします。


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